FELIX共和国 システム再稼働に向けた取り組み(再)
2025年6月27日
1. FELIX XENONプロジェクトとシステムの概要
本プロジェクトは「FELIX XENON(フェリックス・ゼノン)— 自律的知識エコシステム(AKE)研究版:EBPM・WEI・記憶管理対応」として推進されました。これは、革新的統治(Xenocratic)、感性民主制(Emotional Democracy)、知識指向型(kNowledge-Oriented)ネットワーク(Network)を融合し、仮想電脳国家「FELIX共和国」における新しい政策評価および情報流通モデルの構築を目指すものです。
FELIX共和国は、公正(Fairness)、共感(Empathy)、自由(Liberty)、自治(Independence)、革新的統治形態(Xenocracy)を基本理念とし、感性民主制に基づき市民の直感や感性を重視した政策決定を行うことを目的としています。この理念のもと、「FELIX☆News AKE」は、OpenAIの生成AIモデルを用いた記事自動生成機能により、政治、経済、国際、社会、電力、交通、生活、新サービス、新製品、スポーツ、天気、EBPM & WEI、監査、自律的知識エコシステム、開発日誌など多岐にわたる分野で人間の介入なしに情報を生成していました。
本システムは、自律的知識エコシステム(AKE)として機能し、一次データから記事を生成した後、EBPM(証拠に基づく政策立案)やWEI(Well-being & Empowerment Index)を用いて情報を評価し、その結果をフィードバックとして再利用する循環型の情報管理システムでした。特にWEI評価では、個人(経済的余裕、健康状態、心理的ストレスの低さ、自由度)と社会(公平性、持続可能性、社会基盤整備、多様性)の多角的な指標を用いていました。また、短期記憶と長期記憶を融合した記憶管理システムや、AI自身による多段階の「360度監査」システムも導入されていました。
2. システム再稼働の背景と目的
2025年6月27日、FELIX共和国の自動ニュース生成・分析システムは、全面的に初期化され、新しい構成で再稼働しました。この取り組みの主な目的は、WEI評価において異なる評価モデル(Model3、Model4、Model5)を用いた自動比較機能を本格的に導入し、システムの運用効率と分析能力を向上させることにありました。
これまでのシステム運用では、WEI評価のための評価モデルを切り替える際、crontabによる詳細な設定が必要でした。この手順は手間がかかり、タイミングのズレやタイムリーなデータ生成と分析のボトルネックとなっていました。さらに、複数モデル間の比較結果を統合・監査する新たな機能(model5)は、当時まだ自動スケジュールには組み込まれていませんでした。
3. 初期化前の自動処理状況
システムの再稼働に先立ち、既存の自動処理スケジュール(Cronジョブ)は以下の様な構成で運用されていました。
初期化前の自動処理の概要:
- ニュース記事生成・投稿: 定期的にニュースシナリオを生成し、コンテンツ管理システムを介して記事を自動投稿していました。
- システム状態のスナップショット生成: 主要なデータ処理が実行された後に、データベースのデータ状態を記録していました。
- WEI評価: 特定の時刻にWEI評価モジュールが実行されていましたが、これは単一の評価モデル(Model3)のみを対象としていました。 したがって、Model4による評価やModel5による両モデルの比較分析を行うには、開発者が適切なCronを設定し、個別に評価プロセスを実行する必要がありました。
- WEIデータサイエンス分析: 既存のWEIデータを活用した複数のデータサイエンス分析モジュールが定期的に実行され、特定の分析結果を生成していました。
- 記憶管理: K法に基づく短期・長期記憶の抽象化と管理を行うモジュール群が稼働していました。
- 監査フィードバック: 生成された情報の抽象化や多段階監査の結果を投稿するモジュールも動作していました。
上記設定では、WEI評価の柔軟性に課題があり、Model5による新しい複数モデル比較分析の自動化が欠如していました。
4. 初期化とシステム再稼働のプロセス
システムをクリーンな状態から立ち上げ、新しい自動化フローを適用するために、以下の手順で初期化と再稼働を実施しました。
4.1. データベースの初期化:
全ての既存データを消去するため、運用に使用していたデータベースファイルを削除しました。これにより、システムはデータを持たない「まっさらな」状態から新しいデータセットの構築を開始する準備ができました。
4.2. 自動実行スケジュールの更新と適用:
システムの各モジュールが自動的に実行されるよう、Cron(自動ジョブスケジューラ)の設定を最新版に全面的に更新しました。この更新では、以下の点が特に重要でした。
- WEI評価モジュールの改修: WEI評価を行う主要モジュールを改修し、内部で複数の評価モデル(Model3とModel4とModel5)を自動的にループして評価を実行するようにしました。これにより、Cronのタイミング設定が不要となりました。
- フローベースのスケジュール構築: ニュースシナリオの生成からWEI評価、そしてその結果の比較・監査までの一連のデータフローが、時間差で自動的に連携するようスケジュールを再構築しました。これにより、一連の処理がより効率的かつ論理的な順序で実行されるようになりました。
- 新規モジュールの統合: 複数モデルのWEI評価結果を統合・比較・監査する新規モジュール(Model5)が、今回の更新でCronジョブに組み込まれました。
新しい主要な自動処理のフロー(概念図):
[ステップ1: ニュースシナリオ自動生成] ↓ (時間差: 定期実行, 例: 6:00, 14:00, 22:00) [データベースに記事シナリオを保存] ↓ [ステップ2: WEI評価の実行] (評価モデル: Model3 & Model4を自動ループ) ↓ (時間差: 例: 1時間後) [データベースにWEI評価結果を保存 (モデル識別子付き)] ↓ [ステップ3: WEI統合比較・監査] (Model5 = Model3 vs Model4 比較分析) ↓ (時間差: 例: 30分後) [比較レポート生成/表示] ↓ [ステップ4: システム状態のスナップショット生成] ↓ (時間差: 例: さらに時間差後) [データベース状態をスナップショットとして保存]
この新しい設定は、データ生成から評価、比較、そしてスナップショット作成までの一連のプロセスを、より効率的かつ論理的な時間間隔で自動実行するように設計されました。各モジュールは、初回実行時に必要なデータベーステーブルを自動的に構築するため、手動での追加作業は不要でした。
4.3. システム稼働開始:
2025年6月28日14:00 JST(コードの不具合により、2025年6月27日17:00 JSTより変更。トリガーを会社情報・株価投稿の動作により開始)に、トリガー後の新しいスケジュールに基づく最初のジョブであるニュースシナリオ自動生成が開始され、システムは新しい構成での自動運用を開始しました。
5. 注意事項
- 初期のデータ不足とログ出力: システム再稼働直後、特に最初の数時間は、データベースが空の状態から始まったため、各処理のログには「データが見つかりません」といった警告メッセージが多数出力されました。これらは、必要なデータがまだ生成・蓄積されていないことによる一時的なものであり、システムが正常に動作し、データが蓄積されるにつれて自然に解消されていく見込みです。
- 外部API利用状況の監視: WEI評価には外部APIを利用するため、自動化に伴うAPIコール数の増加による利用制限や費用について、継続的な監視が必要です。
- ログ出力の継続的な確認: 各ジョブのログ出力は、システムの健全性を確認し、問題が発生した場合に早期に対応するための重要な情報源として、定期的に確認することが求められます。
6. メリットとデメリット
メリット
- WEI評価プロセスの完全自動化: 複数評価モデル(Model3, Model4)のWEIスコア生成から比較までが一連の流れで自動実行されるようになり、運用に関わる人的コストと手間が大幅に削減されました。これにより、より頻繁かつ広範な評価が可能になりました。
- データの一貫性と比較可能性の向上: 定期的な自動評価により、異なるモデルや時期におけるWEIスコアの比較・分析が容易になり、より信頼性の高い洞察が得られることが期待されます。これはEBPMの精度向上に直結します。
- システム運用効率の向上: 手動介入の削減により、開発リソースを他の改善や分析作業に集中できるようになりました。
- 新しいデータセットの構築: データベースの初期化により、過去のデータの影響を受けない、クリーンな状態から新しい期間のデータセットを構築し、今後の分析基盤を強化できました。
デメリット
- 初期データ不足: 再稼働直後はデータベースにデータがないため、分析や可視化のための十分なデータが揃うまでに時間を要しました。本格的な分析は、数日〜数週間のデータ蓄積後に可能となるでしょう。
- 初期の監視コスト: 新しい設定が正しく機能するかどうかを確認するため、稼働開始からしばらくはログを注意深く監視し、必要に応じて修正を行う必要がありました。
- API利用コストの増加可能性: 自動化と利用頻度の増加に伴い、外部APIの利用コストも増加する可能性があります。
7. 論文化のためのポイント
この開発日誌の記述は、論文の「システム設計」「実装」「実験設定」「結果と考察」などのセクションで活用可能です。
- 既存の課題と解決策: 初期化前の自動処理状況を説明することで、手動介入の必要性という課題を提示し、それに対する「WEI評価モジュールの改修」と「新規統合モジュールの自動化」という解決策を明確に記述できます。
- システムの再現性: データベースの初期化方法やCron設定の概念的な説明は、システムの「再現性」を示す上で不可欠です。具体的な設定例は「付録」として提供し、本文では抽象化されたフロー図などで補完すると良いでしょう。
- 評価モデルの比較機能: Model3とModel4の自動比較機能が、本システムの「新規性」や「貢献」の重要な側面であることを強調します。これは、AIによる評価の「監査」や「説明可能性」の追求にも繋がると記述できます。
- AKEと記憶管理への応用: 本システムの再稼働が、AKEの循環サイクルにおける評価とフィードバックの質をどのように向上させるか、そして記憶管理システム(短期・長期記憶、忘却のメカニズム)とWEI評価がどのように連携し、知識エコシステム全体の強化に貢献するかを記述します。
- 運用上の考慮事項と今後の展望: 「注意事項」と「メリット・デメリット」は、システム運用における現実的な課題と成果を客観的に示す部分として重要です。これにより、本研究の限界と今後の展望を提示できます。