夜行急行列車 はなます

夜行急行「はまなす」

青函の夜を、いまの足で組み直す


1|夜を抱えて移動するということ

青森の冷たい空気を吸い込み、海峡の夜を切り抜け、札幌の空が白む。かつて夜行急行「はまなす」は、この「夜から朝へ」の連続を毎晩つないでいた。最後の“機関車牽引の定期急行”として2016年春に歴史を閉じた後も、私たちは手段を組み合わせることでその体験を再編集できる。深夜フェリーで海を渡り、朝の函館で体を起こし、特急で札幌へ駆け上がる――これがFELIX☆visit版・現代の“はまなす”だ。


2|「はまなす」の輪郭

  • 役割:青森—札幌を夜間に直結した、最後の客車急行。
  • 車内文化:B寝台/上質リクライニング指定(通称ドリームカー)/のびのびカーペット(寝台券不要で横になれる指定席)という「価格×体力×睡眠」の選択肢設計。
  • 牽引:青函区間を電気機関車、道内区間をディーゼル機関車が受け渡す“リレー”。
  • 終幕:北海道新幹線開業に先立つ2016年3月に定期運転終了。
  • 継承:愛称は多目的特急**「はまなす編成」**(キハ261系5000代)に受け継がれ、観光・臨時運用などで現代化。

重要なのは「物理的な直行便の有無」ではなく、移動の設計思想をどう再現するか、という視点だ。


3|追体験ルート:海峡ナイトクロッシング(青森→札幌)

A. 深夜フェリー(青森→函館)

  • 選び方:スタンダード席~個室相当まで船室の可変が魅力。横になれるフロア席やカーペット席は、旧「のびのび」的な合理性に近い。
  • 体感のポイント:海況が穏やかな日は読書・音声メモ、風が強い日は耳栓+アイマスクでコンディション維持。上着は一枚多めに。

B. 函館の夜明け(港→駅→朝市)

  • 深夜~未明に到着。短い仮眠か朝市の湯気で身体を日中モードへ。港から函館駅までは徒歩可のケースもあるが、荷物や天候次第でタクシーを推奨。

C. 朝の特急「北斗」(函館→札幌)

  • 早朝発の便で午前中に札幌着。車内で二度目のまどろみを取り、到着後すぐ活動に入れるのが最大の価値。

逆方向(札幌→函館→青森)も同様に設計可能。朝の特急で函館へ、夜はフェリーで本州へ戻る。


4|費用感

※あくまで“目安”。季節・等級・割引商品で上下します。

区分低めレンジ標準レンジ備考
フェリー旅客運賃約2,200円約3,800円等級・シーズンで変動(深夜でも等級選択可)
港→駅 移動約500円約1,500円徒歩=0円、タクシー利用で幅
特急「北斗」指定席約5,000円(割引適用時)約10,000円期間・席数限定の割引で実勢が大きく変わる
朝食・休憩約1,000円約2,500円朝市・駅ナカ等で個人差

合計目安約8,700〜17,800円(食事含む)。

  • 節約型:割引指定席+スタンダード船室+徒歩移動 → 1万円前後も可能
  • 快適型:個室相当船室+指定席(通常)+タクシー → 1.6〜1.8万円台が目安。

旅行前に当日のダイヤと料金を必ず再確認。価格は予告なく変わります。


5|WEI(Well-being & Empowerment Index)旅版 採点表

定義WEI = Well-being & Empowerment Index。旅が「より良く生きる(Well-being)」と「自ら選び動ける(Empowerment)」をどれだけ支えたかを、6観点で10点満点評価し、単純平均(または重み付け)で総合化。

観点定義(旅版)測り方の例編集部試算*所見
アクセス夜〜朝の導線の分かりやすさ乗継ぎの迷い/標識の明瞭さ7.5港→駅の移動計画を事前に描くとスムーズ。
アフォーダビリティ費用対体験価値「交通+睡眠」の合算効率8.0宿代節約×横になれる移動で強い。割引適用でさらに向上。
包摂性ひとり旅・荷物・弱者配慮船室選択/段差・動線6.5深夜~未明の移動は体力依存が残る。選択肢で補える。
地域インパクト現地での消費・交流の波及朝市・駅前商店の利用8.0早朝消費が地域に直結。会話が生む小さな関係資本。
サステナ既存資産の活用・再生車両の再活用/船舶更新7.0廃客車の海外再生や新造船への更新で示唆的。
レジリエンス乱れ時の代替容易性欠航/遅延の第2案7.0フェリー2社×鉄道で選択肢がある。荒天期は事前に“3手”を。

*試算はモデル行程(青森→函館→札幌)を想定。現地での実測・主観に応じて読者自身の再採点を推奨。
総合WEI(単純平均)7.3 / 10(編集部モデル)。


6|行程例

前日

  • 21:00 青森港へ移動、チェックイン/軽食
  • 22:30〜24:00 深夜フェリー出港(横になれる席を確保)

当日

  • 03:00前後 函館港着 → 駅へ移動(徒歩 or タクシー)
  • 05:30〜06:00 函館朝市で朝食・休憩
  • 06:00台 特急「北斗」出発午前中に札幌着
  • 午前〜午後 市内または近郊観光/ビジネスへ

逆方向:札幌朝発の「北斗」で函館へ → 夜は深夜フェリーで青森へ。終電や翌日の予定に合わせて調整。


7|持ち物・運用コツ

  • 耳栓・アイマスク・軽い枕:睡眠の質=翌日のパフォーマンス。
  • 上着1枚多め:船内は空調で冷えることがある。
  • “3手”プラン:①予定便 ②代替便 ③陸路(鉄道・バス)を事前にメモ。
  • 時間の余白:港→駅の移動に15〜30分のバッファ
  • 写真の権利:自撮り・自作図版を基本に。公共空間でも他者の顔は配慮。

9|まとめ:速度より“連続性”

深夜の海を横になって渡り、朝の市場で湯気を浴び、特急のリズムで札幌へ滑り込む。これは単なる移動の組み合わせではない。夜から朝への連続性を自分の手に取り戻すというデザインだ。直行の夜行急行は消えたが、WEI(Well-being & Empowerment Index)の観点で見れば、いまの方が選択肢と編集余地が広い。旅はまだ、こちらの味方をしている。


付記

  • 本稿の費用レンジ・ダイヤの考え方は2025年8月18日時点の一般的な傾向に基づく目安です。実行時は、当日の公式情報をご自身でご確認ください。

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

免責・権利表記(Research Edition)

本サイト群(FELIX, Qchain, Nozomi Website Series – Research Edition)は、個人が趣味・研究目的で運営するウェブサイトです。あらゆる組織・団体・企業・教育機関とは一切関係がありません。

掲載内容は個人の見解であり、投資・取引・契約・勧誘・誘導を目的とするものではありません。投資その他の意思決定は自己責任で行ってください。情報の正確性・完全性・最新性は保証しません。

本サイトの文章・画像・構成等の著作権は運営者に帰属します(特記なき場合)。無断転載・複製・改変を禁じます。引用する際は出典を明記してください。

本サイトの利用により生じたいかなる損害についても、運営者は一切の責任を負いません。

© 2025 Research Edition / Non-commercial, research purpose only.